沖縄県移住者インタビュー「編集者」 セソコマサユキさん

クリエイティブを通して沖縄で幸せな暮らしを実現。新しい移住のかたちとは?

沖縄を拠点に活動する編集者、セソコ マサユキさんは神奈川県出身の移住者。現在は紙、web等の媒体を問わず、企画、編集、執筆、写真などを通して沖縄の魅力を独自の世界観で表現し発信しています。現地を訪れ、同氏に現在の暮らしや移住、沖縄の魅力について話を伺いました。

セソコマサユキさん
セソコマサユキさん

―沖縄に移住されたきっかけを教えてください。

沖縄に移住したのが今から9年前で、以前は東京の広告代理店で雑誌の編集業務に携わっていました。担当していた雑誌『自休自足』は自給自足や田舎暮らしを紹介する内容で、当時から地方暮らしをしている人とは取材やイベントで話す機会も多く、地方での暮らしを身近に感じる環境にありました。その後編集長が独立して起業し、一年後には合流。編集チーム「手紙社」に参加して、本の編集業務だけでなく、カフェの運営やイベント企画にも関わるようになりました。東京の仕事は楽しく充実していましたが、仕事は多岐に渡り、多忙な毎日に。忙しくて家族と過ごす時間も少なく、これから先の暮らしことを真剣に考えるようになりました。仕事はお金を生み出すものなのでつい優先しがちですが、より良く生きるという観点では仕事も生活も同じように大切なもの。今のままでは生活バランスが良くないなあと、感じるようになりました。そこで自分に合った生活バランスにしていくのには、暮らしそのものを変えることが必要。単純に定時で帰れる仕事に転職することでは根本的な解決にはならない、地方に移住するという選択肢もありなのでは?と考えました。

透き通る青さが美しい、沖縄の海
透き通る青さが美しい、沖縄の海

沖縄以外にも四国地方など何ヶ所かは探してみたのですが、沖縄は私のルーツで、旅行をしたときに何となく肌に合う居心地の良さを感じたこともあり、思い切って移住を決めました。仕事を決めずに移住してしまったので、いまになるともっと計画的に動けば良かったかなあと思いますが、当時は楽観的で気持ちが既に沖縄にあり特に不安に思うこともなく…。編集の仕事で培った、伝えたいことを伝えたい人に伝わりやすくアウトプットしていくスキルを使えば本や写真、イベントなど沖縄でも何かやれる仕事はある、もっといろんなことができると思っていました。

沖縄暮らしで生まれた家族との時間
沖縄暮らしで生まれた家族との時間

セソコマサユキさん
セソコマサユキさん

―現在はどのような取り組みをされていますか

「編集者」として、雑誌やweb媒体での取材、執筆や、地元企業やお店、つくり手さんたちのホームページやロゴをはじめとしたクリエイティブの作成、ブランディングのお手伝いなどをしています。企画・ディレクションがメインですが、自分で執筆、撮影まで手がけることもあります。著書として『石垣 宮古 ストーリーのある島旅案内』(JTBパブリッシング 2018.3)、『あたらしい移住のカタチ』(マイナビ出版 2016.6)などがあり、地元の観光情報サイト「沖縄CLIP」では編集長をさせていただいています。先日は沖縄や離島の魅力を改めてシェアしたいという思いから「島の装い。展」というイベントを企画・運営しました。

セソコさんの著書
セソコさんの著書

「島の装い。展」の様子
「島の装い。展」の様子

都会に比べるとクリエイティブの大切さを知ってもらうにはハードルが高いこともありますが、クリエイティブの価値や可能性を信じ、ひとつひとつ丁寧に仕事をしています。また、昨年からは、沖縄の暮らしを楽しみ人生の豊かさを分かちあう、ちいさなメディアコミュニティ「SQUA(スクア)」を開設しました。

SQUAのHP
SQUAのHP

SQUAのInstagram
SQUAのInstagram

沖縄で暮らす自分たち自身がもっと沖縄の暮らしを楽しむために、訪れてくれるひとたちの旅の時間がもっと豊かになるために、それぞれの「好き」を発信、共有し、交流する場です。一方的な情報発信ではなく、似た感性を持った仲間がもっと繋がり情報をシェアできればと思い、「インスタグラム」や「ノート」などのSNSを使って更新しています。

沖縄の海
沖縄の海

-沖縄に移住して変わったことや良かったことをお聞かせください。

今はフリーランスで仕事を行い、事務所も自宅です。出社していた時と比べて、自分のペースで仕事ができていてストレスフリーなのが良いと思います。家族もすぐ近くにいますし、美しいビーチも車で10分くらいの所にある。都会と比べると沖縄の時間の流れはゆったりとしていますし、人とのコミュニケーションの温かさや距離感が私にはとても心地よいです。移住したころは数えるほどしか知り合いがいませんでしたが、人が人を繋いでくれて仲間も増え、仕事の依頼も増えました。沖縄では手に職を持っていて店や物づくりを新たに始める人も多く、観光も盛ん。写真やライティング、ホームページ制作の需要もあるので「編集」という仕事との相性も良かったです。このコロナ渦の状況も大変なこともありましたが、みんなで助け合う機会も多く、人と人との繋がりの大切さ、沖縄の良さを再認識するきっかけになりました。

沖縄の自然
沖縄の自然

―観光とは違う、沖縄で”暮らす”魅力について教えてください。

暮らすという意味で言うと前述のとおり、仕事のペースや美しい自然との距離感、人と人との距離感が私にはちょうど良いです。どの場所が優れている、ということではなく、自分に合った場所に暮らすことが大切なのだと思います。沖縄本島は広大ですが、都会と比べるとコミュニティは狭く、街でバッタリと知り合いに会うこともしばしば。島の人は子供に対して皆優しく、どんどん知り合いを紹介してくれて競い合うのではなく、みんなで幸せになろう!と思うおおらかな性格の人が多いところも特徴です。普段の暮らしに大切な仲間と美しい景色が身近にあることが、沖縄暮らしの魅力ではないでしょうか。

美しい風景が日常の暮らし
美しい風景が日常の暮らし

―移住者のみなさんの暮らしをご紹介ください。

ここから車で1時間ほどの距離にある離島の浜比嘉島に移住した方がいます。浜比嘉島は沖縄の中でも由緒ある神聖な島で、昔ながらのおじい、おばあが暮らす小さな集落があります。そこで「かいのわ」という名前で夜光貝の殻を加工してアクセサリーを制作し、カフェ「うきぐも」も併設して生計を立てています。

浜比嘉島
浜比嘉島

その方が凄いのは、加工技術を誰かから教わったのではなくご独学で身につけたこと、地元の祭りにも参加してするなどしっかりと島の暮らしに溶け込んでいることに感銘を受けました。沖縄には、志次第で様々な生き方を実現できるフィールドがあることと、それを許容して後押ししてくれる懐の深さを感じます。

―沖縄(糸満市)に移住される方にオススメのスポットや、体験イベントについてご紹介ください。

大度浜海岸(ジョン万ビーチ)
大度浜海岸(ジョン万ビーチ)

糸満市は海人(うみんちゅ)の街で、海を臨む美しい景色が自慢です。航海安全と豊漁を祈願する沖縄の伝統行事「糸満ハーレー」や、おすすめのレストラン「糸満漁民食堂」では美味しい魚料理が楽しめます、「美らSunビーチ」では地元の人たちがビーチパーリーを美しい夕日とともに楽しむなど、沖縄の魅力も楽しさも満喫できます。

糸満漁民食堂
糸満漁民食堂

また沖縄は親子で大自然を楽しめるカヤックやキャンプもオススメ。私も子供たちと休日にアウトドアライフを楽しんでいます。アクセサリーのギャラリーショップ「アトリエ・ソウ」から見える美しい夕日をのんびりと眺めるのも、地元ならではの過ごし方と言えるでしょう。

―最後に沖縄に移住される方に向けて、アドバイスをお願いします。

セソコマサユキさん
セソコマサユキさん

リゾートな感じにだけに憧れて移住するのはお勧めしませんが、沖縄は人と人との繋がりがとても温かい暮らしやすい環境にあります。短期間だけではなく、移住を検討している場所に2週間から3週間滞在し、地元のスーパーや人が集っていそうなカフェに行き空気感に触れて欲しいです。

街の様々な情報や生活水準、天候などを詳しく知ったうえで移住をするとより安心感があると思います。暮らしていくにあたって、島の人がお祈りする場所、大切にしている場所を尊重することは重要。沖縄では自分で何かを始めて行動していく気持ちがあれば、島の人はしっかりと受け止めてくれて、新しいことを始める環境をきっと後押ししてくれるでしょう。沖縄の事を一緒に考えて、楽しい沖縄暮らしをしてみてはいかがでしょうか。

セソコマサユキさん

URL:http://masayukisesoko.com/
※この情報は2021(令和3)年7月時点のものです。