糸満市移住者インタビュー「cafe MONDOOR(モンドア)」 オーナー生駒匠さん

世界を旅して糸満に辿り着いたオーナーが営む「cafe MONDOOR(モンドア)」

糸満市のノスタルジックな街並みの中、ひときわ築年数を感じさせるビルがある。そのビルの2階に佇む珈琲店が「cafe MONDOOR(モンドア)」だ。この店の特徴は、ひとたびドアを開けるとまるで別世界のように洗練された空間が広がっているということ。世界32か国を巡った末、糸満市に移住したオーナーの生駒匠さんは、この店を2017(平成29)年4月に開業した。比較的新しい店にもかかわらず、隅々までお洒落な空間やおいしい珈琲、生駒さんとの会話を求めて多くの人がひっきりなしに訪れる。出身地は岐阜県だという生駒さんに、糸満市の魅力や移住後の暮らし、出店の経緯を伺った。

オーナーの生駒さん
オーナーの生駒さん

―世界を巡った末にお店を開業されるまでの経緯を教えてください。

生駒さん:実は世界を巡る前から、沖縄県糸満市でお店を出すということは決めていました。ですが、いざ店舗を構えてしまったらその場所を離れられなくなるので、その前に今しかできないことをやっておきたいと世界を巡りはじめました。世界を自分の目で見ることで、お店にも活かせると思ったので。最初はオーストラリアに2年間住みました。ビザが切れるギリギリまで働いて、その後約8か月かけて32か国を巡りましたが、海外旅行をすることで逆に日本の魅力に気付き、日本に帰ってきてすぐ日本縦断の旅に出ました。トータルで海外・日本を約3年間かけて巡り、その後に糸満に移住して、2017年にお店を開業しました。

cafe MONDOOR入り口
cafe MONDOOR入り口

―cafe MONDOORはどのようなお店ですか?

生駒さん:ノスタルジックな糸満の街に馴染むようにあり、だけど扉を開けると全く違う世界が広がっている空間を意識してつくりました。東南アジアに「こんなところにこんなお店が?」という飲食店がいくつかあって、その雰囲気からインスピレーションを受けました。僕は「日常と非日常はそんなに離れてなんかない」という言葉が好きで、その言葉を実現したいと思いました。普段主婦だったり会社員だったりする方が、日常の中にある扉を開けた瞬間から非日常にトリップできて、30分〜1時間の間くらいの間だけでも別世界にいられるような場所にしたいなと。

オーナーこだわりの「非日常」な空間
オーナーこだわりの「非日常」な空間

ノスタルジックな街並みを眺められる席も
ノスタルジックな街並みを眺められる席も

―メニューはどういったものがありますか?

生駒さん:珈琲をメインに提供しています。スイーツもありますが2種類と、仕入れている焼き菓子だけ。それもあくまで珈琲を楽しむために用意しています。ブレンドは、スペシャリティコーヒー(品質の高い豆)を使用したものが2種類と、シングルオリジンの豆を自家焙煎で4〜6種類提供しています。華やかな甘みと香りが特徴的なブレンドはぶれない看板商品で、尊敬するコーヒーショップのオーナーと一緒に作らせていただいています。

cafe MONDOORこだわりのコーヒー
cafe MONDOORこだわりのコーヒー

生駒さん:もともと沖縄に移住を決めたときから「沖縄のつくり手さんの作品を広めたい」という想いもあったので、店で使用する器は沖縄県内の作家さんがつくったもので統一しています。ホット用のカップは、近くに工房を構える陶芸作家・今村能章さんの作品で、取っ手がドアノブ型になっていて面白いので、気になったらぜひ工房を覗いてみてください。

cafe MONDOORスイーツ
cafe MONDOORスイーツ

―なぜ沖縄に移住し、糸満でお店を出そうと思われたのですか?

生駒さん:もともと学生の頃から沖縄が好きで、15歳くらいからアルバイトでかき集めたお金を全部沖縄旅行につぎ込んでいました。当時は飛行機代だけで5〜6万円くらいかかっていたので、結構な大金でしたけどね。沖縄の人、食、文化すべてがおもしろくて、旅をくり返しながら「いつかここに住みたい」と思うようになりました。

沖縄旅行も回数を重ねてくるとどんどんディープな土地に足を運ぶようになるのですが、中でも糸満はとびきりディープで、直感的に「ここに住みたい」と思いました。だけど核心となる理由ははっきりしていません。空港から近くて便利とか、糸満ハーレーや漁港など地元ならではの、文化や歴史を大切にしているとか、好きな理由はたくさん見つかるんですけど、住む決め手を聞かれると「好きなスポーツの好きな理由」を聞かれている感覚というか、「なんか好き」って感じなんです。

cafe MONDOOR周辺 古い建物も多くノスタルジックな街並み
cafe MONDOOR周辺 古い建物も多くノスタルジックな街並み

―お店のテナントはどうやって見つけたのですか?

生駒さん:いい物件ないかなぁと散歩していたら「テナント募集」という看板を見つけて、その場で大家さんに見せてもらいました。大家さんは1階の弁当屋さんなんですけど、最初見たときは正直ちょっと迷いました。立地と2階にあるという点が思い描いた店にぴったりだったんですけど、中は10年以上放置されていてホコリまみれの状態で。だけど大家さんの「好きにやってちょうだい」という一言にぐっときて、借りることにしました。

正方形の木の看板が目印。お店は2階
正方形の木の看板が目印。お店は2階

―お住まいも糸満ですか?

生駒さん:はい。すぐ近くに住んでいます。今は賃貸マンションに住んでいますが、家を買いたいなと思っていて、お店の融資でお世話になっている銀行の方に相談しているところです。

―家を買うとしたら、やはり糸満ですか?

生駒さん:はい。沖縄で家を買うとしたら糸満以外は考えていません。糸満って住めば都なんですよ。買い物から飲食まで糸満の中で完結できますし、空港も近い。糸満は意外と移住者も多くて、いろいろな経験や価値観を持った友達ができるのも魅力です。

オーナー生駒さん
オーナー生駒さん

―移住前と比べて変わったことはありますか?

生駒さん:休日の過ごし方が変わりました。地元だと愛知県が近いので、休日は名古屋に買い物に行くことが多かったんですけれど、糸満に移住してからはドライブに行ったり海を見たり、珈琲農園に行ったりしています。糸満にある南浜公園からの夕陽が好きで、夕暮れを狙って珈琲を持って見に行くこともあります。岐阜は海なし県なので、海に夕陽が沈んでいく景色には今でも感動します。だけど逆に、年に1度地元に帰る暮らしになってから、地元の良さを感じるようになりました。昔は岐阜県には個性がないと思っていましたが、移住して初めて「山っていいな」と感じます。沖縄と岐阜は「海と山」、「車社会と電車社会」など正反対の特徴を持つ土地に住むことで、相乗効果的に両方の価値を感じられるようになったのもよかったなと思います。

糸満市の町並み(報得川周辺)
糸満市の町並み(報得川周辺)

―最後に、これから糸満市で暮らす人に一言お願いします。

生駒さん:ぜひ糸満に来たら、まずは糸満の街を堪能してください。昔からある魚屋さんや商店にも足を運んでもらいたいですし、糸満は地形も建物も歴史も、とてもおもしろい街なので。飛行機から降りてくる時にも糸満の町並みが上空から見ることができるので、ぜひ空からも楽しんでください。

cafe MONDOOR(モンドア)

所在地 :沖縄県 糸満市糸満967-11-2F
営業時間:12:00~18:00
電話番号:080-3187-2319
URL:https://mondoor.net/
※この情報は2021(令和3)年5月時点のものです。